第10話 大腸内視鏡検査  大腸がん発見に威力

ある日、血相を変えたFさんが診療室に飛び込んで来ました。私が「どうしたんですか?」と質問する間もなく「先生!今朝トイレで力んだら便器が鮮血で真っ赤に染まって…」と、その朝の生まれて初めての経験を一気にまくしたてました。

私は、開業以来、積極的に大腸内視鏡を診療に取り入れています。以前勤務していた肛門科専門医院で、大腸がんの発見に驚くべき効果があったからです。Fさんにも、内視鏡で検査することを勧め、検査してみた結果、がん・ポリープなどの病変がなく、「痔からの出血です」と告げると「そうですか、痔でしたか」とほっと胸をなでおろしました。それは、現代が想像をはるかに超える情報化社会で、外来診療を受ける患者さんは、痔よりがんの方が怖いということを十分承知しているからです。

最近は、食生活の欧米化の弊害を指摘する声が多く、その一つに、2010年には大腸がんの死亡者数ががんの部位別でトップになる予測があります。そうした事情から、国も1992年度から老人保健法に基づくがん検診に大腸がんを加えるようになりました。その効果は徐々に表れ始めているようですが、この法律では最初のチェックが検便による間接的な診断方法をとり、大腸がんの発見には限界があるように思います。内視鏡による検査では、大腸の内側の壁を直接診ることができるので、その場で診断、治療することができます。

私はこうした利点を生かして、当医院を訪れた約4千人に内視鏡検査を行ってきました。この調査によって、がんを抱えている割合は、肛門に疾患がない人より、ある人の方が高いことが分りました。出血などの症状がある40歳以上の人に「内視鏡で検査してみましょう」と勧める理由がここにあるのです。


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