第11話 肛門神経症  臭いと敏感に思い込む 

「友達が僕のことを『臭い』と言って、陰でうわさしているのです」―。16歳になる高校生の男の子は、相当思い詰めた様子で話し始めました。「僕のお尻はとても臭く、恥ずかしくて学校にも行けません。このままでは勉強も手につかないし、友達もできないし、人生にも希望が持てない」と真剣なまなざしです。私は早速、診療してみましたが、やはり異常は全くなく、もちろんにおいもありませんでした。私が”やはり”と思ったのは、この少年は「肛門神経症」と言われる病気ではないかと直感したからです。

この病気は対人恐怖症の一種で、一般に思春期の自意識過剰となる年ごろに、よく見られます。肉体的・精神的に子供から大人へと変っていく過渡期に、社会性がうまく育っていない自分を否定する気持が、自分は”臭い”と思い込む形で現れます。これは相手に嫌われるような欠陥があり、他人がそれを嫌がっていると思い込んでいる心性が背景となっています。したがって、他人との接触に強い不安を感じるため、そのような場面を避けようとし、日常生活に大きな支障をきたすのです。だから、周囲がいくら「臭くない」と説得しても、ほとんど受けつけないのが特徴です。さらに現代は、朝シャンに見られるように清潔さの面においてこだわりが特に強いようです。また、においに関してもにおいのない時代へ向っているようですから、肛門神経症が現代の世相の反映といえるかも知れません。

いずれにせよ肛門神経症はほとんどの人の場合、30歳を過ぎると、自然に症状が良くなります。しかし、場合によっては心身両面の治療も必要となりますので、専門医にご相談ください。


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